何度か精神科に入院しました。もう15年も前のことです。
その時の私はどうしても家にいたくなかったし、家にいたら取り返しのつかないコトをしてしまうと思っていました。
入院したら、家族以外と暮らしたら、きっと何かが変わるはず。いや、変わってほしい。
いつも通っていたクリニックの先生に入院を志願したところ、提携している大きな病院のベッドに空きが出て、入れてもらうことができました。
今回は、その経験から感じたこと、得たことを私なりに書いてみます。
なお、プライバシーのため個人の特定に関わりそうな部分はかなり変えておりますので、ご了承ください。
精神病院入院で分かったのは「一人じゃない」ということ
結論から書くと、私は入院したことによって症状自体が良くなったりハッピーになったりはしませんでした。
しかし、そこで出会った人々の存在が、私の心細さを大きく軽減してくれました。
ざっくりと言うと、「世の中には色々な人がいるな、私ももう少しは生きてみようかな」という感じです。
精神病院入院中の暮らし
入院しても、問診は週1回しかないですし、医療的ケアが厚くなるかというとそうでもありません。
私はおとなしかったので、先生からは放置されてましたね。それは通院の時もそうなのですが。
「放置できない方」が無茶なことをしないようにするのが、病院にとってメインの業務なのでしょう。
食事は美味しくもまずくもないです。ひたすら学校の給食みたいな感じなだけでしたね。
お風呂は週1回で、これはキツかったです。入院したのは冬が多かったけど、夏はどうしてたんだろう?
お小遣いがナースステーションに預けてあって、それで配給みたいなお菓子を注文して買うこともできました。最新のお菓子なんてないので、プレーンのポッキーとかとんがりコーンとか、ひと昔前の定番みたいな商品でした。
慣れてくると、数時間の外出を許されます。電車やバスは使ったらダメなので、近所の公園やコンビニやスーパーをウロウロしました。飽きたら、外来の自販機のところで患者仲間と喋ってましたw
作業療法もやりました。内容はさっぱり覚えていません…楽しかったはずなのに。何を作ったんだろう?
超ハイクオリティな彫刻とか家具を作ってる人、油絵を描いている人もいてビックリしました。
精神病棟にはどんな人がいたのか
認知症と思しき高齢女性がかなりの割合を占めていました。脳の運動機能を司るところもうまく働かなくなって、寝たきりで話もできない方もいらっしゃいました。
女性は、一匹狼みたいな人が多くてお互い話しかけず、正直あまりどんな人だか分からなかったですね。
統合失調症の男性も多かったのですが、話してる分には「普通」の人すぎて、どこが悪いんだか分からなかったです。薬の副作用でみんな滑舌は悪いですが。
彼らはどうやら、症状が激しかったときに医療措置入院(本人の同意なしで入院)させられて、保護室(症状が落ち着くまで監視される一人部屋)を経て、一般病棟に移ってきたみたいでした。
男性は喋り好きの方が多くて、病気になった経緯を(聞いてもいないのに)、詳しく教えてくれました。
やっぱり、みんな強いストレスが引き金になったみたいでしたね。
目の前で家族が殺された、パワハラにあった、受験勉強で悩んだ、浪人して悩んだ、大学でいじめにあった…わりとハッキリ理由がありました。
人の命を奪ってしまい、精神鑑定を受けるために入院してる子もいました。本人から聞いたわけじゃないですが。
その子もとってもいい子でした。素直だし、「おはようございます!」とか挨拶してくれて、とても礼儀正しかったし。
人の命を奪った人だと思っても、「怖い」という気持ちはまったく湧いてきませんでした。
あの子がそんなことするなんて、よっぽどのことがあったんだろうな…と想像するしかありません。
彼女いない歴=年齢の人や働いたことがない人も多いので、結婚歴や職歴がある人はめちゃくちゃリスペクトされてました。「あの人何でも知ってる!」みたいな。
みんな彼女欲しい欲しいって言ってて、「女の子紹介してよー!」とか言われましたが「わたし友達いないんでw」とかごまかすしかありませんでした。
お金ないのに、生活保護のおっちゃんが缶ジュース奢ってくれました。いらないって言ってるのにー!
男女が、部屋こそ違えど自由に行き来できる一つのフロアに寝起きしていました。
薬の副作用で性欲なくなるからなのか、真面目な人が多いのか、問題は起きてませんでしたね。でも、患者同士お付き合いしている人はいたみたいです。
症状のため人間関係の維持は難しい
私は退院する時、それらの方々と連絡先を交換して、しばらくやり取りを続けました。
もしかしたら今はそういうのダメなのかもしれませんね。昔は個人情報関係、ユルかったですからね。
退院してからやり取りしてみると、みんなそれぞれ症状が悪化してしまって、つきあっていくことの難しさを感じました。
入院していたときはおそらく薬強めになってて、落ち着いていたんですね。
夜中に、統合失調症の方から「監視されてる!」という電話がかかってきたり、ボーダーの子が「今からリスカする」とメールしてきたり、色々大変でした。
これらの症状は、本当に困ったものだけど、私は本当には困っていませんでした。いや、困るんだけど。
うまく表現できないですが、私はきっと、誰かに頼られたのが単純にうれしかったんです。
こんな私に、悩みを伝えてくれてありがとう、と。
本当に何もできなかったけど。私はみんなに希望を与えてもらいました。
今までひとりでクリニックに行ってひとりで病気と闘っていたけれど、私と同じか、それ以上の症状で悩んでいる人がいっぱいいた。
その事実があるだけで、私は安らぎ、癒しを感じました。
まとめ。とりあえず生き続けよう、みんなで
彼らが今どうしているか、私はまったく知りません。
症状が良くなって幸せになってるかもしれない。
でも、もう天国に旅立ってしまった人も絶対いるでしょう。
みんな、何もできなくてごめんなさい。そして、ありがとう。
精神疾患を持ってしまうと、孤独だし、仕事続かなくて貧乏だし、モテないし、みじめな思いをいっぱいします。自分に価値がないと思ってる人も多いと思います。
ですが、「そんなことない!」と私は声を大にして言いたい。
あのとき、私はみんなにいっぱい助けてもらいました。入院したら、医師じゃなくて患者に救われたんです。
だから、精神疾患のみなさんは、「自分は、存在してるだけでだれかに生きる勇気を与えることができるんだ」と思っていて欲しいです。
現代は、わざわざ私のように入院して精神疾患持ちに会いに行かなくても、インターネットでいくらでも同じ病気の人を知ることができます。
電話番号を教えなくてもいい、直接会わなくてもいい、というのは当時と比べるとかなり便利なのではないでしょうか。
私のようにその人の「困った症状」にまで深くつきあってしまうというのは、お互いのためにならないはずです。
「病名と性格だけを知ってる」程度のつながりは、私たちにとってちょうどいいんじゃないでしょうか。
顔は知らないけど確かに存在している、「精神疾患のあの人」として、私もできるかぎりこのブログに居残り続けようと考えています。
こんな奴がしぶとく生きてるんだから生きてやろう、みたいに思ってくれたらいいなって。
そんなゆるいつながりとしてTwitterも始めたので、よろしければフォローしてやってくださいね。